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公立病院を「効率病院」にするな!

医療機器の世界シェア

きのう(3月19日)、川崎市議会において2021年度予算案が賛成多数をもって可決成立されました。

予算審査特別委員会でも取り上げましたが、本市は市内に3つの公立病院(市立川崎病院、市立井田病院、市立多摩病院)をもっています。

これら市立病院の事業会計は「一般会計」とは区別され、「病院事業会計」として独自会計で運営されています。

しかしながら例年どおり、今回の予算案においても「病院事業会計」に対し「一般会計」からの繰入金が計上されています。

2021年度の繰入金額は、市立3病院合わせ約79億6千万円です。

この一般会計からの繰入をもって「公立病院の経営努力が足りない」「もっと無駄をなくせ」「もっと効率を重視しろ」という批判がたびたび議会から挙がり、さらなる病院事業の改善と効率化を求められることがしばしばです。

そして市民の多くがそのことを支持することになります。

しかしながら、我が国の医療制度においては、経営努力以前に、その制度的環境から病院事業を黒字化(赤字の縮小化)させること自体が困難です。

ましてや今回の新型コロナの診療など政策医療(5疾病・5事業)を義務付けられている公立病院が黒字化することなど物理的に不可能です。

まず理解しておかねばならないのは、我が国における医療費は公定価格で安価に抑えられているということです。

例えば、世界的企業として有名な某自動車メーカーが定価500万円の新車を製造したとします。

それを公定価格100万で販売しなさいとなったなら、さすがの某メーカーでも利益が減るどころか大赤字でしょう。

販売価格は100万円(公定価格)であっても、製造するに要したコスト(人件費、部品代、開発費等)は通常価格ですので。

医療でいうところの公定価格は診療報酬制度によって決められています。

例えば、市立病院で盲腸の手術をすると、その医療費は概ね50〜60万円(入院費含む)です。同じ手術を米国の病院で受ければ130万〜240万円程度もかかります。

同じく市立病院で胃の内視鏡検査を行うと1万1400円ですが、ドイツでは約4万円、米国では8万〜20万円もかかります。

仮に市立病院がドイツや米国並みの医療費を請求できるのであれば公立病院は間違いなく黒字化します。

このように、私たち日本国民が安価で良質な医療サービスを享受できているのは、安く設定されている公定価格と国民皆保険制度のお陰なのです。

加えて我が国では、公立病院を含め各医療機関が購入している医療機器や医薬品が割高であることも知っておくべきです。

1985年の中曽根・レーガン会談の合意のもとに日米間でMOSS(市場指向型・分野別)協議がはじまりました。

以降、日本は医薬品と医療機器の製造または輸入の承認・特許・価格設定については全て米国の許可なしに決定することができなくなりました。

結果、日本の製薬会社、医療機器メーカーは一気に不利に追い込まれ、1980年代に高技術を誇っていた日本の新薬・医療機器分野は輸出超過国から輸入超過国に転落し、日本の医薬品や医療機器は海外メーカーに依存する状況に陥りました。

しかもこの不平等な協議によって、日本は他国の3倍から4倍の値段で新薬や医療機器を米国から買わされています。

例えば、ペースメーカーの価格は英国の5倍、バルーンカテーテルは米国の4倍となっています。

公立病院が購入する際もしかりです。

病院にとって最も重要なのは「安全性」であって「効率性」ではありません。

診療で効率ばかりが重視されれば診療そのものが流れ作業となり、命に関わる「見落とし」にもつながります。

公立病院の医療サービスは警察や消防と同様にナショナル・サービスです。

その赤字は通貨発行権を有する中央政府がもつべきです。

主権通貨国である日本政府が財政破綻することはあり得ないのですから。
2021/03/20

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