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緊縮財政によって奪われた職と所得

現在開かれている通常国会の冒頭、麻生財務相はその財政演説で基礎的財政収支の黒字化目標を堅持する考えを示しました。
なんと2025年度には黒字化するのだとか…
新型コロナ対策で予算(国債発行額)が増えたことの反動もあってか、歳出改革の取り組み、即ち財政健全化の意志を一層強固にしたようです。
それでいて蔵相は「経済再生との両立を図りたい…」みたいに言っています。
しかしながら、緊縮財政によりデフレを払拭できないことは既にこの数年間の我が国の政治が証明しているはずです。
デフレという総需要の不足を埋める経済主体は政府以外にほかなく、
政府収支+民間収支+海外収支=0
という逃れられない恒等式がある以上、国内的には民間部門が投資と消費を抑制している今は政府部門に赤字拡大を期待するほかありません。
にもかかわらず政府部門は財政健全化(財政黒字化=赤字縮小化)に励み、それを海外部門の赤字(貿易収支の黒字)が辛うじて補ってくれている格好になっています。
しかも目下の不況はコロナ禍だけが要因ではありません。
2019年10月の消費税増税(8%→10%)も影響しています。
上のグラフのとおり、GDPは2019年の第4四半期(10〜12月期)から下降して、昨年の第3四半期(7〜9月期)の段階においてなんと約30兆円も縮小しています。
これを世帯あたりに換算すれば、なんと一世帯で約60万円/年もの所得が奪われている計算になります。
そりゃぁ、実質消費支出が落ち込むのも宜なるかなです。
下のグラフのとおり失業率をみても昨年一年間で50万人以上の雇用が奪われています。

とりわけ奪われたのは低賃金の非正規職員です。
むろん、これらの理由は政府の緊縮財政です。
このように言うと「そうは言っても、今年度は既に90兆円以上もの国債を発行して負債残高は増えたじゃないかぁ〜」と反論する人もおられるでしょう、
しかしながら、そんなんでは足りないんですよ。
財政支出の規模は、負債残高や収支バランスをみて決めるものではありません。
みるべきはあくまでも、①総需要が足りているのか、②インフレ率がどれだけ上がっているのかの二つのみです。
これ以上、コロナによる死者はもちろん、経済による(緊縮財政による)死者も出してはならない。
そのためには、なによりも政府が基礎的財政収支の黒字化目標を破棄し、財政支出(財政赤字)を拡大しなければならない。
財政赤字を継続的に拡大しデフレを払拭できれば、GDPが安定的に成長し自ずと財政は健全化します。
むろん、ここでいう財政の健全化とは、国際的な定義にもなっている「政府債務対GDP比率が低下すること」です。
ゆえに「財政赤字なくして再生なし」なのでございます。
2021/02/10 |