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どんなに確認しても、米国様は守ってくれない!

本日未明、菅首相とバイデン米大統領とが電話会談を行いました。
会談時間は約30分だったようです。
報道によれば会談内容は主として…
1.尖閣の安全保障条約第5条の適用を再確認すること
2.自由で開かれたインド太平洋の実現にむけて強調すること
3.米国が4月22日に主催する首脳会合に菅首相を招待すること
4.拉致問題を含め対北朝鮮問題について連携していくこと
5.新型コロナ対策、気候変動問題等でも緊密に協力していくここと
…だったようです。
開催が危ぶまれている東京五輪についてはお互いに触れなかったという。
それにしても昨今は、米大統領に「尖閣は安保条約(第5条)の適用範囲だ」と言わせることが日本の首相の大切な仕事らしい。
とはいえ、そんな言質をとることに何の意味があるのでしょうか。
そこで、安保条約第5条を改めて確認してみましょう。
「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない」(日米安全保障条約 第5条)
要するに条文は、日本の領土領海において平和と安全を脅かす武力攻撃があった場合、国連軍が救援に駆けつけてくれるまでのあいだ、日米は共同して軍事的措置をとることができると明記されています。
これが、いわゆる集団的自衛権ですね。
因みに、ここで言う「国連軍」とは、米国が主導する多国籍軍と理解して頂ければよろしいかと存じます。
しかしながら我が国の場合、占領憲法第9条で軍隊と交戦権がないことになっているため、為政者たちを含め多くの日本国民が「いざというときは米国様が守ってくれる!」と誤解しています。
あきらかな誤解です。
日本の主権(国民と領土を含む)を守るのは、あくまでも日本国民であり、あるいは日本国民が選んだ政府によって指揮される自衛隊です。
少なくとも、米国および米軍の兵士たちはそのように考えています。
そもそも、東アジアという遥か遠くの同盟国の辺境の小さな無人島を守るために、米国兵士が自衛隊に先駆けて血を流して戦ってくれるとでも思っているのでしょうか。
しかも、日本の自衛隊は自国の法的制約により「撃たれなければ撃ち返せない」軍隊となっています。
いったいこれで、どのようにして主権を守るための合理的な軍事的措置がとれるのでしょうか。
繰り返しますが、米国様は守ってくれない。
もしかすると「守る気がない」というより、守る能力すら既に怪しいのかもしれません。
いまや相対的にみても中国の軍事支出は急激に伸び、その軍事能力は大いに高まっています。
つい四半世紀前は、彼の国の軍事予算は米国のそれの25分の1程度でしたが、既に3分の1へとギャップは狭まっています。
ここで「狭まっているだけ」と思ってはならない。
米国の国防予算が、欧州や中東を中心にグローバルなコミットメントのために広く使われているのに対し、中国の予算はもっぱら東シナ海、南シナ海に焦点を合わせることができます。
そのため、尖閣どころか、南シナ海や台湾海峡危機での有事といった特定の軍事シナリオをめぐっても、既に中国のほうが軍事的優位性を確保している可能性が大です。
上のグラフのとおり、経済力を比較しても、中国のGDP世界シェアは既に米国のそれを上回っています。
そんな米国様に頼り切り、緊縮財政によって国防予算を他国並み(対GDP2%)に拡大できないのが我が国の安全保障の実状なのでございます。
2021/01/28 |