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ネオリベラリズムと全要素生産性

米国の全要素生産性

12月決算企業は2020年度末に既に決算を終え、3月決算企業は2021年3月末に決算を迎えます。

昨年12月16日に発売された『会社四季報』2021年1集新集合では、今期配当予想と予想株数をベースにして年間の配当総額が算出され、2013年度から2015年度までの3期の配当総額の平均からの増加率とあわせて全上場会社についての調査結果が掲載されています。

一部の経済誌はそれをもとに企業の「配当金ランキング」を特集していますが、ぜひいちど「労働分配率ランキング」を特集していほしい。

会社四季報が投資家目線で編集されるのは理解できますが、経済誌は少なくとも「経世済民」に基づいて取材し編集し記事にすべきではないでしょうか。

経世済民こそ、経済の語源ですので。

我が国では、1990年代からはじまったネオリベラリズム経済によって、企業の労働分配率は一向に増えず、ひたすらに株主配当ばかりが増えてきました。

そのため、実質賃金は下がり続け、所得(GDP)で稼ぐ日本国民の中間層が破壊されるとともに、さらには政府による緊縮財政が追い打ちをかけてデフレーションが深化、結果として資本収益で稼ぐグローバル投資家たちがその利を貪ってきたかたちです。

それにしてもネオリベラリズムというのは恐ろしいもので、日本よりも一足先にネオリベラリズム経済に突入した英国や米国においても、やはり我が国と同じように実質賃金の低下、あるいはトマ・ピケティの言う「r>g」の状況に陥っています。

とにかく「小さな政府論」のネオリベラリズムは、各種の規制を撤廃するのみならず、政府による市場介入を忌み嫌うことから均衡財政(緊縮財政)を善としてきました。

それによって民間部門にイノベーションがもたらされGDP(国民経済)が成長し、国も国民も豊かになるのであればべつに文句なないのですが、残念ながらそうはなりませんでした。

例えば米国でも、1970年代から既に経済パフォーマンスは着実に低下しています。

生産性の大家であるロバート・ゴードン教授(米国ノースウェスタン大学)は、米国の全要素生産性(TFP)の低下を指摘しています。

全要素生産性(トータル・ファクター・プロダクティビティ)とは、国民経済(GDP)の成長を生み出す要因の一つです。

GDPの成長を生み出す要因は3つあります。

1.資本(生産資産)

2.労働(働く人々)

3.全要素生産性

例えば私は毎年、何百枚もの年賀状を書きますが、仮にパソコンやプリンターなどの「資本(生産資産)」がなかった場合、すべて私という人間(労働)による手作業になります。

しかし、もしもパソコンやプリンターなどの「資本」があれば、当然のことながら生産効率は高まります。

ただ、私のように「どうしても宛名だけは手書きにしたい」という場合には「資本」のみならず、かなりの「労働」量が必要になります。

何百枚もの宛名を手書きするのは誠に大変ですが、だんだん書いているうちに質を損なわずにスピードが早まっていく(生産効率が高まっていく)ことに気づかされます。

おそらく「慣れ」、あるいは「何らかのコツ」をつかんでいるからだと思います。

こうした慣れやコツの部分、即ち生産の効率化や技術進歩が「全要素生産性(TFP)」です。

ただし、「資本」と「労働」は数値化できるものの、TFPは数値として集計することは不可能です。

ゆえにTFPは、全体の増加率(生産の向上率)から数値化できる「資本」と「労働」を控除した残差としては集計されます。

このTFPもまたGDP成長(経済成長)の大切な源泉です。

しかしながら、米国のTFPの推移をみますと、1970年代から既に冒頭の線グラフのとおりポキンと折れ曲がっています。

我が国のみならず、米国においてもまたTFPを押し下げてきたのは、まさにネオリベラリズムに基づく株主資本主義だと思います。
2021/01/06

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