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ふるさと納税は地方衰退政策

いよいよ2020年も年末となり、「ふるさと納税」もまもなく受付終了となります。
この悪しき制度を評価する人たちの中には、ネット上で次のような意見を発信しておられます。
「ふるさと納税制度によって住民の望む行政施策を行わない自治体の税収は流出する。だから当該制度は地方自治体に対して善政を行わせるインセンティブを与えるものだ」と。
いつの時代でも知識人ぶって無責任なことを言う人は多いのでしょうから仕方のないことですが…
せめて現在の地方財政制度(地方自治法、地方財政法、地方財政健全化法等々)を理解したうえで発言してほしい。
地方議会の議員と比べても絶大なる権限(予算権、人事権)をもっている自治体の首長(市長や県知事など)であっても、現制度のもとで自分の思い通りになる行政を実現することなどほぼ不可能です。
そのことは、議会の抵抗があろうがなかろうが関係はなく、例え首長といえどもいくつかの制約によって手足が縛られているからです。
その一つに財政制約があります。
ただでさえ不確実性が高まるなか、どこの地域でも住民が求める行政サービスは量的にも質的にも拡大しています。
ゆえに、住民のための公約を掲げて首長に当選したとしても、予算をつけてその公約を実現すれば、その分どこかの予算を減らさなければならないのが実状です。
その上、ふるさと納税によって税収が流出するようなことがあれば、さらに財政制約が高まって「住民が望む行政施策を行う」どころの話ではなくなります。
そもそも善政かどうかで「ふるさと納税」している人って、どのくらいおられるのでしょうか?
おそらくは多くの人が「返礼品」目的ではないのですか!?
ふるさと納税制度創設を強烈に推進したのは現総理の菅(当時、官房長官)さんですが、ふるさと納税は明らかに「緊縮財政」の一環です。
プライマリー・バランスの黒字化目標という愚かなる政策にこだわり続ける日本政府にとって「緊縮財政」はもはや国是となっています。
その国是に従って、政府は地方交付税交付金をも減らし減らし続けてきました。
自然、前述のとおり、地方自治体は東京都を除いてどこも財政難に陥りました。
そうしたなか創設されたのが当該制度で、ありていに言えば……
「中央政府はもはや地方自治体の面倒はみない。地方同士でお互いの税収を奪い合え!」
……これが「ふるさと納税」です。
要するに、地方行政に自由競争の原理をもちこんだ構造改革です。
結果、返礼品競争(善政競争ではない)に負けた自治体は負け組となり、自治体間格差が生まれます。
だいたいからして当該制度は受益者負担の原則にも反しており、地方創生どころか地方の衰退を加速させる制度といっても過言ではありません。

2020/12/13 |