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後期高齢者の医療費窓口負担

きのうは、第11回となる『経世セミナー』でした。
ご多用の中、ご参加下さいました皆様に深く感謝申し上げます。
さて、昨年の12月、政府の全世代型社会保障検討会議は中間報告のなかで「原則1割負担となっている後期高齢者の医療費窓口負担割合を一定以上の者は2割負担とする」という案を発表しました。
そして昨日、麻生太郎蔵相が閣議後の記者会見で、「(後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる案について)1年にわたり議論してきており、議論は煮詰まっている。結論を出す時期だ」と早期決着を求めています。
むろん、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる令和4年度からの実施を目指してのことです。
中間報告の言う「一定以上の者」は、年収170万円以上の後期高齢者が対象となっています。
厚労省の試算によれば、現役並み所得世帯及び住民税非課税世帯を除く後期高齢者全体の52%にあたる約945万人の医療費窓口負担割合を2割負担とした場合、一人あたり年平均で34,000円の負担増になるとしています。
人口割合の多い「団塊の世代」が後期高齢者となることで政府の医療費負担が重くなることを恐れてのことなのでしょうが、だったらふつうに国債(貨幣)を発行して賄えばいい。
でも財務省は絶対にそれをしようとはしません。
なぜなら「財政収支は常に均衡していなければない(これ以上、国債を発行してはならない)」という教義(ドグマ)が彼らを支配しているからです。
しかしながら、今年度は既に70兆円ちかくの国債を増発していますが、国債金利をみてもインフレ率をみても一向に上がっていません。
我が国のような主権通貨国(変動相場制度を採用し、自国通貨建てで国債を発行できる国)では、インフレ率が許すかぎりにおいて政府の国債発行(貨幣発行)に上限はありません。
ゆえに、政府は国債を最大限に発行できるように、国内の供給能力を一層高めていく政策を採るべきです。
国民及び国内企業のモノやサービスをつくる力を高めることを「生産性の向上」と言いますが、生産性を向上させるには政府、企業等の各経済主体が生産性向上のための「投資」を拡大しなければなりません。
残念ながら需要拡大が見込めないデフレ下においては、企業投資の拡大は見込めませんので。
であるからこそ、政府による需要創出(財出拡大)政策が求められているわけです。
生産性向上により供給能力を継続的に引き上げることができれば、後期高齢者の医療費窓口負担割合を引き上げることもなく、あるいは社会保障費の伸びを国民に押し付ける必要などもありません。
資本(生産資産)を投じることで生産性を向上させ、経済(一人あたりのGDP)を長期的に成長させることこそ、資本主義の王道です。
2020/12/05 |