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保有米国債の大量売却は、対米圧力には成りえない



今年の5月、米国による制裁措置が原因で、人民元相場がオフショア市場で急落したときがありました。

その際、いよいよ北京は大量の保有米国債を売却するのではないか、というニュースが注目されました。

米中対立が深まるなか「やがては報復手段として北京が大量の保有米国債を売却するのではないか」と言われることがしばしばです。

たしかに中国は日本に次ぐ、世界第2位の米国債保有国です。

6月の時点での保有米国債は1兆744億ドルです。

かつて我が国でも、橋本龍太郎首相が渡米した際に「米国債を売る衝動に駆られる」と威嚇発言をしたことで米国様のお怒りを被ったなどという逸話が残っていますが、それは怪しい。

例え日本や中国が大量の保有米国債を売却したところで、米国に対して何らの報復にも脅しにもなりません。

このこともまた、現代貨幣への理解がなければ到底理解できないことです。

では、中国を例にとって考えてみましょう。

これまで中国が大量の米国債を蓄積してきたのは、むろん巨額の経常黒字(貿易黒字)を計上してきたからです。

経常収支の黒字が続けば、自然、大量のドルを獲得することになります。

そうして保有することになったドルの運用先として、米国債を購入してきたわけです。

因みに、日本が大量の米国債を保有しているのも同じ理由です。

しかしながら、このことをもって「日本や中国の巨大な経常黒字が米国政府の財政をファイナスしている」とし、まるで日本及び中国が米国の国家財政を牛耳っているかのように論じられるのは間違いです。

この種の間違いの根底には、政府債務が民間貯蓄によって支えられているという誤解があります。

米国政府の債務が日本や中国の貯蓄によって支えられているわけなどあろうはずがありません。

そもそもドルを発行できる米国が、ドルを発行できない日本や中国からドルを借りなければならない理由などないのですから。

要するに、中国が保有しているドルは米国政府が発行したものなのであって、対米貿易で得たドルの運用先として中国は米国債を「持たされている」に過ぎない。

むしろ米国が中国に対して“米国債”という安全資産を提供してやっている、と言ったほうが正確です。

なお「中国が保有してる米国債…」といっても、なにも中国人民銀行の金庫の中に米国債証書が保管されているわけではありません。

米国の中央銀行であるFRB(連邦準備銀行)の口座において金額が電子登録されているだけです。

即ち、中国の保有米国債はFRBの管理下にあるということです。

それに、もしも中国が米国に対し究極的かつ決定的な敵対行為を起こした場合、トランプ米大統領は法律に基づいて中国が保有する米国債を没収することも可能です。(国際緊急事態経済権限法)

そのような事態になったとき、経済的打撃を受けるのは米国ではなく中国です。

現在、米中対立が激化していますが、仮に中国が「今後は米国債の保有を止める」ことを決定したとしても、それは同時に、中国が対米経常収支の黒字の一切を失うことをも覚悟する必要があります。

それを避け、対米経常収支の黒字を維持したまま全ての米国債を売却するにしても、中国は米国債を売却して得たドルを他の通貨に両替しなければなりません。

大量のドルが売られることでドル安になりますが、そのことによって中国の保有するドル資産の価値を目減りさせることになります。

なによりも、ドル安(=元高)によって中国の輸出競争力が損なわれます。

そして中国からドルを購入した人たちは、そのドルを何らかのドル資産で運用しなければなりません。

結局は米国債が買われることになるわけです。

ゆえに、北京政府が米国債の大量売却で脅しをかけたところで、米国政府は一向に困らないのです。

前述のとおり、米国は米国債を中国に保有してもらっているのではなく、むしろ中国が持たされているのが現実です。

変動為替相場制を採用し、インフレ率を抑制できるほどの供給能力をもち、なおかつ自国通貨建てで国債を発行できる国会においては、政府の発行する債券は絶対にデフォルトすることはあり得ないし、それを相手国に持たせることで国政政治上においても優位に立つことができるわけです。

現代貨幣とはそういうものです。
2020/09/14

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