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第四次台灣危機は起こり得るか

中国人民解放軍統合参謀部の李作成参謀長が「中国は台湾問題を解決するために平和的手段と軍事手段の双方を備えておく必要がある」と発言したとのことです。

とりわけ、台湾との平和的な再統一の機会が失われる場合、人民解放軍が領土の完全性を確保するため「あらゆる手段を用いる」と明言したらしい。

これが李参謀長の私的見解なのか、人民解放軍としての戦略的意思なのか、それとも北京政府の正式な方針として既に確立されたものなのかは解りません。

1995年、台湾において台湾独立後初となる総統選挙が行われた際、それに反発した北京政府は軍事演習の名のもとに台湾海峡全域をミサイル着弾地点に設定し、事実上、台湾海峡を封鎖しました。

いわゆる第三次台湾海峡危機です。

実際に台湾海峡にミサイルが発射され、一歩まちがえば戦争の危機でした。

これに激烈な反応を示したのが、台湾が中国に併合されることを恐れた覇権国・米国です。
(当時の米国はまちがいなく覇権国)

米国は中国によるミサイル演習が開始されると、即座に“ミサイル演習の中止”を北京に要請します。

演習を中止しなければ“実力行使”も辞さず!…と警告したわけです。

しかし北京は米国の警告を無視してミサイル演習を継続しました。

警告を無視された米国は、台湾海峡に空母打撃群2ユニットを派遣します。

米国空母の接近を知った北京は「米国は台湾に注目している場合ではない。自国の西海岸を心配したほうがいい」と核で米国を脅します。

すると今度は、米国が中国の“核による脅し”を無視。

そのまま進軍し、ミサイルの発射を繰り返していた台湾海峡に米国の空母打撃群2ユニットが現れたわけです。

さぁ、たいへん。

なにしろ米軍空母は、米国を象徴する存在です。

空母一隻ずつに歴代の大統領の名前が付いていることでも明らかです。

ふつうの国の艦艇を攻撃するのと米国の空母を攻撃するのとでは、全くわけが異なります。

例え空母にミサイルが当らずとも、大統領の名前が与えられた空母の近くにミサイルが着弾しただけで米国への宣戦布告と見做されます。

台湾海峡に侵入した米軍は、2ユニットの全ての戦闘機、全ての艦艇を臨戦体制におきました。

最強の米国を前にして、ついに北京は演習の中止を決断し、沿岸部に展開していた人民解放軍を撤退させることになりました。

はるばる遠くからやってきた、たった2隻の空母に圧倒的な軍事力の差をみせつけられ何も手を出せずに敗北したわけです。

結局、どんなに核を保有したところで、通常兵器に圧倒的な差があれば軍事・外交で優位に立つことはできない。

この事件をきっかけに、北京は米軍空母の接近拒否とアジア地域の制海権の掌握を地政学的な目標としたわけです。

あの当時(1991年)、中国のGDPは米国の20%程度(購買力平価GDPベース)にすぎませんでした。

それが今や米国の120%にまで達しています。

世界最大の輸出国、世界第2位の輸入国の経済大国となり、軍事予算も急激に伸ばしました。

前述の第三次台湾海峡危機のころ、中国の軍事予算は米国の25分の1程度でしたが、今や3分の1へとそのギャップを縮め、米国の覇権パワーを相対的に低下させています。

政府支出の推移

未だ一隻とはいえ、念願の空母(遼寧)も保有しました。

それでも、欧州や中東などへのグローバルなコミットメントのために軍事予算を投じなければならない米国とは異なり、北京はもっぱら南シナ海や東シナ海を中心に東アジアだけ焦点を合わせることが可能です。

ゆえに、次なる第四次台湾海峡危機(南シナ海での有事を含む)の際には、1995年(第三次台湾海峡危機)のような筋書きではいかない可能性もあります。

今回の李作成参謀長の発言はそれを裏付けるものかもしれません。

むろん軽率には行動を起こさないでしょうけれど、李参謀長の発言は「いざとなったらそれなりの覚悟と根拠はありますよ」と言っているように私には聞こえます。
2020/06/06

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