令和6年4月、「物流総合効率化法」が成立し、一定規模以上の荷主企業に対して物流統括管理者(CLO)の設置が義務づけられました。
これを契機に、国全体で物流改革が本格化しています。
この法改正は、単に企業の運営だけでなく、地方自治体の都市インフラに対しても新たな対応を迫るものです。
なぜなら、どれほどCLOが内部改革を進めても、道路などの物流基盤が整っていなければ成果は上がらないからです。
ゆえに川崎市にとって、この物流革命はまさにチャンスでもあり、同時にリスクでもある重大局面です。
私は、本市臨海部の扇島・東扇島地域は、東京湾岸の中心に位置し、首都圏と全国を結ぶ物流基地として絶好の地理的条件を備えていると考えます。
特に扇島JFE跡地は、東京港・横浜港に隣接し、水素エネルギー拠点としての整備も進んでいることから、自動運転物流や脱炭素化に対応した次世代型物流拠点として、大きな可能性を秘めています。
しかしながら、川崎市の道路インフラ、とりわけ臨海部における整備の遅れは深刻で、このままでは企業流出の第二波が起きかねません。
それこそが、私の最も危惧するところです。
要するに、「本市は東京・横浜に比べて道路インフラが脆弱であるがゆえに、再び企業が逃げてしまうのではないか」という強い懸念が拭えないのです。
そこで私は、本市臨海部のインターチェンジ近くの広大な土地に、高速道路IC直結型の次世代型基幹物流施設(最先端の技術と機能を備えた物流拠点)を整備することを市議会で提言しています。
こうした物流拠点が整備されることは、物流の効率化のみならず、本市のインフラ整備と経済発展にとって極めて重要であると考えたからです。
今後、物流効率化に向けた自動走行化の流れは、間違いなく加速していきます。
前述のとおり、本市臨海部の扇島は自動走行化対応の次世代型基幹物流施設には最適な地理的条件を有しています。
港から近く、東京港、横浜港からの陸揚げされた荷物の配送を期待でき、あるいは関東内陸部から港までの集荷も期待できます。
扇島のJFE跡地には水素拠点の整備が進められていることから、水素の供給も可能になりますので、これらの整備は道路インフラが乏しい臨海部の活性化にも必ずつながるはずです。
ただ、結果として、ターミナルや港湾で働く人たちのための軌道系インフラが必要になるかもしれません。
現在、三菱地所、三井不動産、大和ハウスなどの大手デベロッパーも、マンション開発から大規模倉庫開発へと軸足を移しつつあります。
大規模な土地の入札についても、マンション事業者より倉庫デベロッパーのほうが、数年前から落札価格が上回っています。
例外的に都心ではなおマンション価格が高い状態が続いていますが、広大な土地はほとんど残されていません。
その点、扇島は物流基地として最適な候補地なのです。
以上のような問題意識のもとに、私は令和6年12月議会(一般質問)において次の4点を提起しました。
①物流効率化は道路インフラ整備と不可分であり、川崎市の対応が急務であること
②扇島が最適な物流拠点候補であり、国家プロジェクトとの連携を見据えた計画立案が必要であること
③しかし現状では、臨海部の開発に関する所管が4つの部局に分散しており、統一的な方針決定ができない体制にあること
④したがって、物流政策の受け皿としての一元的セクションの創設が不可欠であること
このように、単なる問題の指摘にとどまらず、具体的な行政組織改革を提案しました。
なお、先日の6月24日の川崎市議会(一般質問)においても、私はこの提言を継続し、国や首都高などからの初期的照会の有無、またワンストップ窓口の進捗状況について確認をとりました。
担当副市長は「国からの照会はまだないが、本年5月に関係局会議を開催し、情報共有を開始した。今後も国の動向に注視し、関係局との連携を図っていく」と答弁しました。
この答弁からわかるのは、市として一定の連携意識は芽生えたということです。
これは前進です。
しかし一方で、それはあくまで「国からの照会待ち」という受け身の姿勢であり、「注視する」「連携を図る」という抽象的な言葉が並ぶばかりで、川崎市としての主体的戦略や明確なスケジュール、責任部署の明示が依然として欠落しています。
都市間競争が激化する中で、戦略的に動く自治体はすでに、国の施策に先回りしてプロジェクトを提案し、土地の確保や民間企業との連携に踏み出しています。
待っているだけでは、成長の波には乗れないのです。
道路が整備されなければ物流は成り立たず、物流が整わなければ企業は来ません。
なにより、物流拠点の整備は、川崎市のインフラ・雇用・財政・環境、あらゆる面で市民生活に直結する重要政策です。
だからこそ私は引き続き、次世代型基幹物流施設の整備に向けて、川崎市が国と対等に連携できる体制を整えること、そして部局横断で戦略を立案できる司令塔機能の構築を提起してまいります。
未来は「注視」するものではありません。
未来とは、準備し、構想し、自らの手でつかみ取るものです。