止まる電車、止まらぬ課題_JR南武線と踏切問題

止まる電車、止まらぬ課題_JR南武線と踏切問題

川崎市を縦断するJR南武線は、一日に約90万人(2015年のデータで約84万人)もの乗客を運ぶ重要な鉄道インフラです。

その沿線には世界的なハイテク企業の研究開発機関が数多く存在していることから、まさに「ハイテクLINE」と言っても過言ではありません。

だからこそ、その輸送の信頼性・安全性が社会的・経済的にも極めて重要です。

さて、そのJR南武線ですが、むろん私もよく乗車するのですが、最近とくに頻繁に緊急停車する件数が増えていることに気がつきます。

席に座れぬお年寄りなどが急停車のために倒れそうになっているケースもよく見かけます。

そこで私は、令和7年6月24日の川崎市議会(一般質問)において、所管局である「まちづくり局」に対し「JR南武線が緊急停車しなければならない理由にはどのようなものがあるのか?」と質問をしました。

まちづくり局長の答弁によると「JRに確認したところ、踏切の直前横断や異音感知などが要因のようだ…」とのことでしたが、異音感知が急に増えるわけもないので、おそらくは踏切の直前横断が増えたのではないかと推察します。

現時点では公表データが確認できないため、推測にとどまりますが…

川崎市北部の踏切問題は、インフラ政策を軽視した革新市政時代の影響により、刻下、本市行政の悩みの種です。

本市内には112箇所の踏切がありますが、神奈川臨海鉄道や大師線などの踏切の多い臨海部を抱えている川崎区を除くと、最も多い区は多摩区で、小田急線とJR南武線を合わせてその数は32箇所にものぼり、次いで多いのが高津区で9箇所となっています。

多摩区の32箇所は本市北部ではダントツの数字で、うち22箇所はJR南武線の踏切です。

生産年齢人口比率の低下が深刻化し、それを克服するための生産性向上が求められているなか、この踏切集中は多摩区の発展に重大な障害となり得ます。

本来であれば、溝ノ口以北のJR南武線についても連続立体交差化事業を行い、踏切除去と橋上駅化を同時に具現化することで交通流の円滑化をはかり、通行者の安全性を確保していくべきところですが、JR南武線の溝ノ口以北については、府中街道、国道246号、東名高速が既に立体交差化されており、例えば川崎府中線は既存の高架橋を鉄道(JR南武線)が高高架で跨ぐことになるなど、その事業費が大幅に増大することもあって連立立体交差化事業の採択の対象になりません。

連続立体交差化事業の採択要件は、国と自治体の負担割合や交通影響評価、採算性などの調査が求められます。

そこで私は、川崎市議会において次のように質問をしました。

「例えば、駅と踏切が隣接している本市北部の中野島駅や宿河原駅などにおいては、単体での立体交差化事業により、危険な踏切を除去し、交通流の円滑化を図っていくための知恵を出していくほかはないと考える。そこで伺うが、現在行われているJR南武線、尻手小杉間の連続立体交差化事業において、矢向駅の勾配とすり付け延長はどうなっているのか」

所管局である建設緑政局は「矢向駅から塚越踏切までの縦断計画につきましては、最急勾配を1.87%とし、すり付け延長は、約480メートルです」と答弁しました。

すかさず私は「これは、JR南武線についてJRとの協議の縦断勾配の最低条件が明示されたと理解して宜しいのか?」と。

建設緑政局長は「鉄道構造物の桁及びレール等の高さ2.12メートルを加え、道路から6.82メートルを確保する必要があるため、鉄道事業者との協議により、1.87%と計画したものです」と答弁しました。

なるほど、私は基準勾配が1.5%であることは承知していたため、矢向駅から塚越踏切までの縦断勾配が1.87%とされたことを受け、次のような提案を行いました。

「そこで提案ですが、例えば、中野島駅は踏切除却と駅の改良などの事由とセットにし、駅と隣接踏切である中野島第二踏切のみを立体化し、JR南武線の現在線に擦り付ける単独立体交差であれば採択基準になるのではないでしょうか。そうなれば、踏切と駅が隣接している宿河原駅なども同様の手法で単体立体での高架化が可能となります。その可能性について伺う」

私の提案に対する建設緑政局長の答弁は次のとおりです。

「中野島駅直近の中野島第二踏切の除却を目的とした立体交差化については、周辺に高架化された道路等はないものの、複数の踏切が存在するなどの課題がございます。鉄道の単独立体交差化の事業化にあたっては、費用対効果の他、交通量や周辺への影響など、様々な調査等を行い、これらを整理していくことが必要です」

行政答弁らしく、やや迂遠な表現ではありますが、要するにこの答弁は「課題が整理されれば可能性はある」と言っています。

この日は質問時間の関係で、より深く議論することはできませんでしたが、今後も粘り強く議会において戦略的な提案を行い、中野島駅や宿河原駅の単独立体交差化事業を具現化させたいと思います。